牛は常にお乳を出す分けではありません。母牛が、生まれた仔牛を育てるためにお乳を出します。仔牛の健やかな成長には、母牛のお乳が欠かせません。私たち人間は、仔牛が飲んだあとの残りをおすそ分けしてもらっているのです。
牛は草を主食とする草食動物です。大きな体を草で維持するために4つの胃袋を持ち、第1胃と呼ばれる胃の中にはたくさんの微生物を飼っています。
牛が食べた草は、胃の中の微生物たちの餌として利用され、その微生物が消化吸収されることで、牛自身の栄養源として利用されます。草食動物にしかできない特殊な仕組みのおかげで、牛の大きな体が維持されているのです。
けれども、より多くの生乳を効率よく生産するために、牛に輸入穀物飼料を与えたり、牛舎の中で牛を管理する近代酪農が普及し、草食動物特有の仕組みを利用しきれない牛が多くいます。
一方、日本の面積の約7割を占める山林には、牛の主食になる植物がたくさん生えているのに、それが活用されずに放置されています。
山地酪農は山の資源を有効活用しながら、牛本来の食性を活かして生乳を生産する、自然の力に逆らわない酪農なのです。